2人で森の中へと入る。
逸輝はあたしの歩幅に合わせて隣を歩いてくれる。
逸輝って何気無い気遣いが凄く出来る人なんだな。
……今だって、あたしはいつもより歩くペースが遥かに遅くなってるのにそれに合わせてくれるんだもん。
何もお互いに話さないけど、それが何処か心地よかった。
しばらくの間はあたしがビクビクしながら警戒して歩いていた。
でも、全然何もなくてあたしは怖いけど、警戒をしなくなった。
「……何にも起こらねえな」
「……そうだね、なんか拍子抜けするね」
そんな事を逸輝と話していると。
ーーーガサガサッッ!!!
「ヒッ!!!な、何⁇」
突然草が揺れて音を出す。
「……風で草が揺れただけだ」
そう言って逸輝はあたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
でも、気を緩めて居たからか恐怖が倍増したよ……。
怖くてあたしは思わず、隣に居る逸輝の浴衣の袖の端を少し掴んだ。
「……瑠奈⁇」
「……こ、怖いの。つ、掴んでていい⁇」
「…………不意打ち過ぎだろ……」
「な、何か言った……?」
「……別に?そんなに怖いならやめるか?」
「……それは嫌。怖いけど、今から戻るのも怖いもの。……だから怖いけど頑張る」