1アウト、ランナーなし。


ギュッと合わせた手を握りしめて、祈るように涌井君を見つめる。


首を何度か振った後、彼は小さくうなずいた。


そして、第1球を投げる。


カキーン!


ボールは勢いよく飛んでいく。



「ライナーだ!」



誰かがそう叫んだ。


野球をあまり知らない私は、それが何なのかわからなかったけれど、打球は転がることなくグローブにおさまったようだった。


二塁手が、とったボールを涌井君に投げ返している。


アウトに赤い光がもう一つついた。


2アウト。



……勝利まで、アウトはあとひとつ……。