「だって…菜花ちゃんは?菜花ちゃんに借りればいいじゃん」
伊吹の愛しの彼女の。
なんて、心の中で悪態をついてみても、あたしが伊吹を好きだったことは変わらない事実で。
菜花ちゃんはあんなにいい子なのに、もし、伊吹があの子に出会っていなかったらあたしと付き合ってくれたかも…なんて、往生際の悪いことばっかり考えてしまう自分が嫌でしょうがない。
「菜花のクラス、今日数Ιないんだってさ。…というわけで、貸して」
そう言いつつ、手で催促してくる伊吹。
「…うん。授業終わったらすぐに返してよ?!あたし、次、数Ιなんだから!!」