「ねぇたん・・・大好き」

ゆりののか細い声がわたしの耳に届いた。

そしてゆりのは動かなくなった。

あの声は、本当に最後の力を振り絞って出したものだと分かった。


「ゆりの。冷たいよ。熱下ったのかな」

意識が朦朧としている中、わたしはゆりのの体の冷たさだけを感じ取っていた。

その後はよく覚えていない。

お母さんが朝方になって帰ってきて、ゆりのの姿を見た。

もう、思い出したくもない。


その後、わたしの家に来たのは顔も名前も知らない、見ず知らずの男の人だった。

「はじめまして。ひよりちゃん。今日からよろしくね」

そう言って笑った顔にわたしは恐怖心を抱いた。はじめて、笑顔が怖かった。


その次の日から、その人はわたしに暴力を振るうようになった。


虐待とまではいかないけど、やっぱり怖かった。

それからわたしは男の人の事が怖くなった。

それから少しの間、わたしは男の人が怖かった。

特に、手。


殴られた時の大きな手が忘れられない。


だから、浜岡君の時もわたしの体は拒絶反応を起こしたらしい。