――ひよりside――


忘れもしない。

寒い冬の夕方だった。

わたしはまだ11歳。ゆりのは3歳。


「ねぇたん。おでこ熱いの」

そう、ゆりのがわたしに近づいてきていった。

ゆりののおでこはかなり熱くて。熱があるのだとすぐに分かった。



そのときのわたしに出来る事は出来る限りした。

首にねぎを巻いたり。冷却シートを貼ったり。


でも、やっぱり子供のわたしに出来る事には限界があった。

そこでわたしはお母さんに電話をかけることにした。


でも、何回コールしてもお母さんは出てくれない。


そのうちにも、ゆりのの熱はどんどん上がっていった。

「はぁ。はぁ。」

苦しそうな息遣いが今でもまだ耳に残っている。


『もしもし』

何回も何回もコールして、お母さんはやっと電話に出た。

「お、お母さん!!ゆりのが死んじゃう!熱があってね、すっごく辛そうなの!!」

するとあの人はこう言い放った。

『少しすれば熱なんて下るわよ。お願いだから邪魔しないで。今デート中なの』

そう言って一方的に電話は切られた。