わたしたちがいたのは屋上につながる階段の下だったから、わたしの声が響く。


「ひよりちゃん?」

戸惑ったようにわたしの顔を覗き込んでくる菊馬君。

わたしは下を向いていた顔をあげて菊馬君を見た。


「どうして菊馬君にそんなこと言われないくちゃいけないの?」

「あの・・・」

今のわたしに菊馬君の言葉は届かない。


「菊馬君に竜我を否定する資格はないよ。記念日なんて関係ないよ。わたしは竜我っていう人間が好きなの。記念日を祝ってほしくて付き合ってるわけじゃない!」


わたしは記念日とかそんなこと関係ない。

竜我が好きなの。祝ってもらおうと祝ってもらわなくてもそんなのどうでもいい。


「あはははは!」

目の前にいる菊馬君が急に笑い出した。

えっ!?

動揺してるわたしにお構いなく笑い続ける菊馬君。

「ひよりちゃんサイコー!いいね!ひよりちゃんみたいな子を待ってたんだよ」


何を言ってるんだ。このお方は。

「俺ね。竜我のこと中学生の時から知ってるんだ。でもその時から竜我に近づいて来る女は竜我の顔が目当てだったんだ。」


そう言う菊馬君の顔は少し寂し気だった。

「だから、いつもさっきみたいなこと言ってたんだ。そうすると自然に女は竜我から離れていったんだよ」

そうだったんだ。

「でも、ひよりちゃんみたいに本気で対抗してくる子はいなかったよ」

微笑む菊馬君。