「へー。あの竜我に彼女・・・」

驚いた様子の亮人。

まるでひよりを品定めするかの様に上から下までなめまわせように見る。


ひより、あきらか怯えてるし。

「名前聞いても良いかな?」

笑顔で言う亮人。

あ、やばい。

「あ、はじめまして。姫岡ひよりと言います」

ペコっと頭を下げるひより。

「菊馬亮人です。よろしくひよりちゃん」

ニコッと笑う亮人。

これはやばいぞ。

俺は亮人からひよりを隠すようにして立った。

うしろのひよりは驚いている。


亮人は急に笑い出した。

「相当好きなんだな。そうと知ったら諦めるわけにはいかないな」


やっぱり。こんな一瞬で男をおとすとか、ひより何者?

「ひより。帰ろ。あいつうざい」

向坂がそう言った。


適当な理由を付けてこの場から立ち去ろうとしてくれていることが分かった。

向坂が俺を見て少し頷いたから。


「あっ、うん。じゃあね竜我。菊馬君もさようなら」


律儀に亮人にまで挨拶をするひより。

ニコリと微笑みながらひよりに手を振る亮人を俺は全力で睨んだ。


「かわいい子だな。竜我が女の事で本気になるとか、珍しいじゃん」

口の端をあげて言う亮人。

この顔をする時、決まって何かを企んでいる顔だった。


俺は何も言わずに教室に入った。