部屋に戻ると、真新しい制服を手に取って着替え始めた。
足元にはネクタイを咥えたミィが、「サボるなよ」とでも言いたげにこちらを見上げている。

「分かってるから、ちゃんと行くから。」

ミィからネクタイを受け取ると、一番上まできつく締めた。
鏡で髪型や服を確認すると、鞄を掴んで叫ぶ。

「母さーん。気を付けて来いよー?」

そして、家を出ると今まで毎日通った道とは反対方向に向いた。

駅に向かって歩いていると、スーツやいろんな制服に身を包んだ人が歩いていく。
糊付けされたような真新しさを感じさせる。

その中に紛れて歩く自分。
本来なら、今日という日に此処にはいなかったであろう自分―。
くすぐったいような、焦燥感のような、違和感とわずかな吐き気を感じた。