教室に着くと、暁はまだ来ていないようだった。
自分の机に鞄を投げ置くと、教室の後ろで談笑する真知子と舞に近づいた。

「真知子、舞、おはよー!」

声を掛けると二人も笑顔で挨拶を返してくれる。
私はさっそく昨日の帰りの出来事を二人に話した。
電車で偶然会ったこと、暁と友達になったこと、名前で呼び合うようになったこと。
二人は驚きを隠せない様子で、心底羨ましそうだった。
まるで実った恋を報告するようで、少し照れくさくなる。
じゃれ合っていると、後ろからあの声で呼ばれる。

「ゆめ、おはよ!」
「暁!おはよっ」

隠しきれない嬉しさで声が弾んでしまう。
振り返ると、後ろから奈々が顔を出す。
暁にそっと耳打ちすると、楽しそうに言い合っている。