「奈々ー」

声を掛けながらハッとした。
奈々の隣には、腕を組み沈み込むように座った彼女がいた。
影になって見えなかったらしい。

戸惑った気持ちを悟られないように奈々に笑顔で近付くと、
次の駅で降りるからと席を譲ってくれた。
笑顔を崩さないままお礼を伝え、彼女の隣に腰をおろす。

どうしても隣を見ることができないまま、奈々は次の駅で降りて行った。
明らかにきまずい沈黙。
でも、こんなチャンスはきっとない。

スカートを強く握りしめ、ゆっくり笑顔で隣を見る。