真知子が何度目かの「どうしよう」を言いかけた時、私は思わず頬杖をやめる。
その様子に真知子と舞が、私の視線の先を追いかける。
今まさに、一人の女子生徒が彼女に声を掛けようとしていた。

「あのー…、もし良かったら一緒に食べない…?」

少し怯えたように声を掛けたその子を、じっと見つめる彼女。
続く沈黙に不安そうな表情を見せ始めると、彼女は慌てて席を立ち頷いた。
ホッとしたような表情でお互い笑顔を見せると、彼女は一つのグループに溶けて行った。

「あー、先越されちゃったね!」

残念そうに言う真知子に、私はお弁当を広げ始めた。

「奈々は昔から一人でいる子とか、ほっとけない性格だからね」

私の言葉に、舞が不思議そうな顔をした。

「原田さんに声かけてた子、ゆめの知ってる子なの?」
「うん。水原奈々って言って、塾が同じで小学校から友達なの。」

入学式では熱にうなされ、周りを見る余裕もなかったので、今日になって奈々がいることに気付いた。