「あの、夏希?」

一瞬なんと切り出せばいいものかと考えながら、控えめに声を掛けてみる。
まだ内容を知らされていない夏希は、小さく首を傾げながら私の目を見つめる。

どんなに言葉を選んでも、伝えるべき事実は一つしかない。
真っ直ぐ目を見据えて、前置きと共に言葉を並べた。

「大声出したりしないでね…?
私ね、アイツと別れたの。」

私の言葉に時が止まったように静止して、次に言葉にならない声を漏らした。

「なっ、えっ!?」
「落ち着いて、分かるけど落ち着いて。」

夏希の腕をぎゅっと掴むと、夏希も静かに深呼吸した。