うちは父が死別しているので、母子家庭だ。
女手一つで必死に育ててくれる母さんには、いつも肩身の狭い思いをさせてきた。

今も目に焼き付いて離れない。
何度も何度も頭を下げて、こんこんと叱り続けてくれた。

素直になれなくて、反抗することでしか自分を表現できなかった。


中学三年の夏、担任と何度目か分からない喧嘩をした日、母さんが言った。

「全部暁が判断して、思うようにすればいいのよ?いいと思えばすればいいし、ダメと思えばしなければいい。迷ったら声掛けてよ。
母さんいつでも、隣にいるでしょ?」

怒鳴るわけでもなく、諦めたような口調でもなく、ただ優しく包み込むような口調で、すごく綺麗な笑顔でそう言った。
とっくに見放されたと思っていた。
どうしようもない娘に、うんざりしているんだと思っていた。

あふれる言葉の代わりに、涙が止まらなくなったのを今でも覚えている。