「原田、暁ちゃん?」

僅かに緊張を含ませたような笑顔でそう声を掛けられた。
突然の事に何も言えずに固まっていると、大輪の向日葵の様な笑顔で“あの子”は話し続けた。

「私、同じクラスの佐伯夢埜です。仲良くしてね?」
「…っす」

そう答えるのがやっとだった。
有無を言わせぬような笑顔で、不思議な空気をまとった子。
でも不快感はなく、自然と言葉を引き出してくれる。

あんなに戸惑っていたのが嘘のように、電車から降りる頃には下の名前で呼び合うほどに打ち解けていた。