きっと帰ればお母さんにこっぴどく叱られるだろう。
それでも構わない。
もう過去になってしまった、綺麗なばかりの思い出に区切りをつけたかった。

地元に着く頃には空はすっかり星空で、携帯には何度も着信が残っていた。
確認だけで折り返しはしない。
今このタイミングで怒られても問い詰められても、答えに困る。

駅から少し離れたバス停に、彼によく似た学生がスポーツバッグを肩にかけ立っていた。
それが彼でも、もう避けることも、笑いかけることもしない。
いつまでも面影と思い出に縛られるのは嫌だ。

真っ直ぐ前を向いたまま、男子高生の横を通り過ぎた。