暖かくなってきたとは言え、高熱を出している自分にとっては体育館は酷く寒くて震えが止まらなかった。
出席番号でもすぐ後ろにいる真知子が時折背中を撫でてくれる。

さっき教室で見つけた彼女は、原田暁という名前らしい。
出席番号はかなり後ろの方で、私の後頭部の遥か向こうにいる。

体育館に向かう道すがらも彼女は一人だった。
そんな姿をいろんな言葉で耳打ちし合うクラスメート達。
私と真知子も例外ではなかった。

「ねぇねぇ、ゆめ。あの茶髪の女の子、かっこいいと思わない?」
「そうだね、なんか中性的でかっこいいね。」

同意した私に嬉しそうに、真知子が笑う。
隣で一生懸命話す真知子の声がだんだん遠のいて、私の視線は彼女の後頭部に集中していた。

あの大きな瞳を正面から見てみたかった。