周りの声をBGMに少し眠くなった頃、顔を伏せているのに教室の空気が変わったことに気付いた。
一瞬静まり返ったような空気の中、近くにいる人たちからひそひそと声が聞こえる。

「見て見て、あの子かっこいいね。」
「なんか、怖くない?」

褒める声に、異な存在を捉えた怯えの声。
渦中の人が気になって重い頭をゆっくり起こす。

少しぼやけた視線の先には、黒板の座席表を見る後頭部が映った。
短く切られた茶色いショートウルフ。

(男の子…?)

ぼんやりそう思っていると、振り返る横顔に驚いた。
横顔でも分かる大きな瞳に、白い卵のような肌。

(女の子なんだ…)