洗面所に向かいながら、姿見と睨めっこしている母に声を掛ける。

「つーかさ、来なくてもいいって。昨日も貧血で倒れたんだし、寝とけよ」

何気なく発した言葉に、けたたましい返答が返ってきた。

「馬鹿なこと言ってないで、準備して。娘の入学式に行くなんて当たり前でしょ!早く着替えなさい!」


原田暁、15歳。
今日から高校一年生。
性別、生物学上、一応女。
話し方や見た目でいつも男と勘違いされる。
自分自身いっそ男に生まれたかったくらいだ。

怒りながらも姿見から目を離さない母さんに、いつもの調子で返事をする。

「へーへー」