「ただいまー」
「お邪魔しまーす」

二人の声が同時に響くと、奥から母さんが顔を覗かせた。

「あら、諒くん!南フランス行ってたんでしょ?こないだお母さんに会ったのよ。今日はご飯食べて行きなさいね?」
「いつもすんません」

二人の間で再会の挨拶が終わると、二階の一番奥の部屋にある暗室に向かった。
中に籠って、今日の写真を現像すると段々と美しい桜が浮かび上がってくる。

出来上がった写真を見てもらいながら、隣にある自室に移動する。
いつも諒さんは何枚もある写真を、一枚一枚丁寧に見てくれる。

ただ、部屋に着いてからも黙り込んだままの諒さんに、痺れが切れて声を掛けた。