ファインダー越し、その子と見つめ合ったほんの数秒、ありきたりな言葉だけど時が止まった気がした。
女の子はこちらに気付いているはずなのに、瞳を少し見開いただけでただじっとこちらを見ている。
しばらく見つめ合っていると、その子は視線を逸らさないまま涙を拭うと行ってしまった。

視界から完全に人影が消えると、構えていたカメラを下ろした。
きっと、見てはいけない場面だったに違いない。
でも何故だか胸が震えて、初めて泣いている人間を綺麗だと思った。
初めての感情に胸がドキドキと音を立てながら、でも確かに『撮りたくなった』


手にしたカメラに視線を落としながら、ただじっと自分の手元を見ていた。