思っていた通り、声を掛けることも掛けられることもなく入学式は終わりを告げた。

黙って一人正門まで歩いていくと、母さんが待っていた。

「先に帰ってりゃいいのに。また貧血起こしたらどうすんだよ」

そう言いながら母さんを置いて歩いていく。
母さんはちょこちょこついてきながら、顔を覗き込んできた。
子供の目から見ても、本当に可愛い人。

「倒れたら暁がおんぶしてくれるもん。っていうか、友達は?まだ作ってないの?」
「しねぇから。つか、ガキじゃあるまいし、ツレなんて別にいらない」

しばらく黙って歩いていると、穏やかな声が聞こえた。

「高校の三年間は、すごく貴重な思い出になるわよ。友達や、大切な人にもきっと出会う。焦る事ないわよ。」

母さんの言葉には答えず、聞こえないふりをして歩いた。