沙月は中学の同級生で、比較的仲の良い友人だった。

高校なんて行く気のなかったあたしは、働きながら写真の勉強をして、いずれはプロになるつもりでいた。
ただ、この件に関してはさすがに許してはもらえなかった。

「喧嘩するなり、授業サボるなり、あんたの好きに生活したらいい。
でも、とりあえずは進学しな。
世の中そんなに甘くないんだよ!」

学生時代元ヤンだった母さんにすごまれ、渋々進学を決意。
でも、散々迷惑かけ通しだった母さんの為にも、せめて高校くらいは出ておこうと思い直した。


駅の改札を抜けると、沙月が立ち止まった。

「じゃあ、あたし向こうのホームだから」
「おう、またな」

自分もホームの階段を上る。
すでに自分がのるべき電車は止まっていた。
これから毎日乗り込む大きな口に、慌てて足を踏み入れた。