「はー。お姫様の扱いは難しいな~」

こんな冗談を言う貴広。

あたしはムスッとして無言のまま。

「もえ、今からドライブ行こうか? 支度しておいで。ここで待ってるから」

「行かない。行きたくない」

「そうか…。じゃあオレ帰るよ。居ない方がいいみたいだし」

貴広の口調が少しだけ冷たくなったような気がした。

「帰るなら帰れば?」

本当は帰ってなんて欲しくない。

だけど、意地を張ってしまう。頭と心が思うことと言いたいことが一致してない。

「──分かった。気が向いたら連絡して」

そう言い残して、貴広は玄関のドアを開けて出て行ってしまった。