ハタから見ると、竜くんから大野さんに乗り換えたようにしか見えないかもしれない。

それは仕方ないこと。


でも、あたしだっていい加減な気持ちで大野さんの気持ちに答えようとしているわけではない。


ズルズル二番目の女を続けて、未来のない恋を選ぶか。

目の前にいる誠実で優しい男性との未来ある恋を選ぶか。

あたしは後者を選ぶことにしただけ。


それに、大野さんが竜くんにちっとも怯まない姿に男らしいなって思ったのも事実。

頼もしい人だなって思えた。



「──行こうか?」

大野さんが、いつの間にか落としていたバッグを拾い、玄関のドアを開けた。

そうだった。実家に帰ろうとしているところだっんだ。

“大野さんの彼女になる”──そんな予想外の出来事が起こって当の目的をすっかり忘れていた。