竜くんは返す言葉がなかったのか、「チッ」と舌打ちをして大野さんを睨みつけている。

今にも殴りかかりそうな雰囲気を醸し出していて、ハラハラした。

でもそんな竜くんに大野さんは、動じることなかった。


「──早く帰って下さい。もえさんをこれ以上困らせないで下さい」

「分かったよ。帰ればいいんだろう? 優等生くんとこれ以上話してたら吐きそうだしな」


竜くんは、「チッ」と二度目の舌打ちをした。

よほど悔しかったんだろう。

あたしは内心ホッとしていた。


「もえ、また来るからな」

「……」


何も答えないでいると──

竜くんはあたしの手首を掴み顔を近づけてきてキスをしていた。

それは一瞬の出来事だった。

大野さんの目の前でしなくても…。