そこには案の定、大野さんが立っていた。


「──確かに誠実そうな男だな。チャラチャラしてるオレとは正反対だな」

竜くんは大野さんの顔を見ながら言う。


「お願いだから、竜くんは帰って!」

精一杯の声を上げて訴える。

涙が頬をつたい流れ落ちていく。

重くて息苦しい空気が流れているような気がした。


「──すみません。今日はこの辺にしてもらっていいですか?」

大野さんはあくまでも冷静だ。

「今日はこの辺でってことは、別の日ならいいってことだな」

「撤回します。もえさんを泣かすくらいなら、二度と来ないで下さい」

「あんた、もえに振り向いて欲しくて必死なんだな。オレなんていたら邪魔だもんな」

「邪魔というか目障りですね。本命がいるくせにもえさんに近づいて、挙げ句の果てにこんな悲しい顔させて。男として最悪ですよ」