あたしはバッグを受け取り、背を向けた時だった。


「──水谷、オレ本気だから」


大野さんのそんな言葉が聞こえた。


「いきなり、恋愛対象になってるとか言われても信じられないと思うけど、信じて欲しいんだ」

「……」

「恋に落ちるなんて一瞬のことなんだよ。小さなきっかけなんだよ」


あたしはどう言えばいいのか分からず、背を向けたままだった。

「水谷…」

気配で大野さんが近づいて来ることに気付いた。

どうしよう。心臓が爆発してしまいそうなくらい、バクバクと音を立てている。

やがて、ドアノブにかけていたあたしの手に大野さんの手が触れた。


恥ずかしさで体全身が熱くなっていく。

振り向けば、大野さんの顔が至近距離にあるのかと思うと、背を向けた状態になってしまう。