「大野さん、からかわないで下さい」

「からかってないよ。一緒に過ごしてみてそう思ったんだよ。水谷のこと恋愛対象になってるよ」


そんなわけない!

過ごした時間なんて知れてるじゃないの!


「部屋に入れた女の人にいつも同じこと言ってるんでしょ?」

「そんなことしてないよ。女を部屋に入れたこと自体、久しぶりだよ」


あたしを見て話をする大野さんの瞳はとても真剣。

心臓がバクバクいっている。


「水谷」

「…昨日は色々ありがとうございました! 助かりました!」


それだけ言うと、あたしは玄関の方へ逃げる。

ブーツを履いていると、大野さんがやって来た。


「水谷、忘れ物」

「へっ?」

「ほら」


大野さんはバッグを差し出した。