「──出たくないです。帰りたくない!」


あたしは小さい子供のように、嫌々と首を横に振った。


「水谷?」

「……っ」


涙がまた溢れてくる。大野さんが目の前にいるというのに。

間違いなく迷惑がかかってる。

なのに……。

「カラオケ、満喫(漫画喫茶)、ゲーセン。他には何があるかな? 水谷の行きたい所に行こう。ここは閉店時間も近いから出ないと、な」

そんな大野さんの優しい声が聞こえてきた。


「本当すみません……」

「いいって」


大野さんは、あたしが泣いている理由を聞いてくることはせず。

大人の対応を取ってくれていた。