「見栄というか。意地みたいなもんで、もえと2人きりにしたけど、オレとしては気が気じゃなかったんだよ」

貴広の話を聞いて「フフフ」と不気味な笑みが零れる。

何だか嬉しくて嬉しくて……。そこまで不安になっててくれてたなんて。

「──やっぱりあの男の方がいい。とか思ってないだろうな?」

「思ってないよ。あたしは貴広がいいの」

「後悔しても知らないからな」

「そんなことあるわけないから」

あたしにとって貴広は特別な人。大事な大事な人。

それはこの先変わることはないだろう。断言出来る。

ここまで誰かを深く想ったことはない。そしてここまで誰かに想われこともなかったような気がする。

「もえがここに戻って来て気持ち確認したら、腹減ってきたな」

「あたしも。お腹空いた!」