でも、クスクス笑う貴広を見ている限り、気にしてないみたい。

「で、もえ、今真っ直ぐ走ってるけど道は合ってるのか?」

「合ってるよ。次の信号右に曲がって」

「了解」

それから、竜くんの一人暮らしするアパートに着いたのは、20分くらい経ってからだったと思う。

「あいつの車止まってるか?」

「ううん。止まってない。仕事残業なのかも」

「しばらく待つか」

貴広はアパートの駐車場が見える所に路駐した。(本当はダメなんだけど)


「もえ」
「貴広」


竜くんを待っている間、沈黙を破ったのはほぼ同時だった。

互いに互いの名前を呼んだ。


「何?」

「貴広からどうぞ」

「もえから話して」