「……っ」

かおりちゃんは明らかに涙をこらえていた。

そしてあたしを見てこう言った。

「もえちゃん、あたしって普通にモテるから、大野さんごときの男なんて浮気相手にもなろうと思わないから」

「はぁ…」

あたしがポカンとしている間にかおりちゃんは背を向けていた。そして走り出してこの場を去って行った。

「車乗って」

「うん」

貴広に言われるがまま、あたしは車の助手席に乗った。

「これで問題が一つ解決したな」

エンジンをかけながら、貴広が言葉を続けた。

「もう一つの問題も解決しに行くぞ」

「もう一つの問題?」

「もえ、心当たりないのかよ?」

貴広は大袈裟にため息をついている。