「──もえ、オレのアパートに引っ越さないか?」
貴広がそんなことを言ったのは、行為を済ませて、2人でお風呂に入っている時だった。
「あの二股男がいつここを訪ねてくるか分からないだろ? 万が一もえが玄関のドアを開けたら、今日みたいなことが起きないとは言い切れないし。もっと怖い目に合う可能性だってあるんだし。オレのところにいれば安心だと思うんだ」
「そっか…。そうだね」
貴広の言うことは一理ある。
竜くんが簡単に引き下がるとは考えにくい。
「荷物は少しずつ運べばいいから。で、荷物の整理が終わったら、このアパート引き払えばいい」
「貴広、それって…。一緒に住もうってことだよね?」
「あぁ。そうだけど。もしかして気乗りしない?」
ぶんぶん。首を大きく横に振る。