もし、今の記憶を残したまま時間を戻せるなら、あたしは過去につき合ってきた彼氏とはつき合わない。

迷うことなく貴広を最初で最後の恋人として選ぶだろう。

「あのさ、もえ」

「何?」

「──あの二股男のタバコの匂いがすげー鼻につくんだけど」

「あっ…。ごめんね」

「その匂いオレが綺麗に消してやるから」

貴広はそう言って軽く唇や頬にキスをしてくる。

「待って…」

「どうした?」

「インフルエンザ治るまでキスもエッチも禁止。そう言ったの貴広じゃなかった?」

「さぁ? 忘れた。それにオレ、エッチするなんて一言も言ってないし」

貴広はニヤリと笑う。