「ねぇねぇ、君もひとり?」
ざわざわ
ざわざわ
うるさい教室で遠慮がちに話しかけてきた、後ろの席の男の子。
知らない中学の制服だ。
「うん……私、県外から来てて」
「そうなんだ?俺もひとりでさぁ。
体験入学、いくつ行った?」
「私はここだけだよ。どうせここしか受験しないだろうし」
「へぇ、じゃあ俺もここに決めよっかなぁ」
すごく馴れ馴れしいなぁと思いながらも、ひとりで心細かった私にはありがたかった。
まわりの人たちは、やはり友達同士で来ていて、私とこの男の子だけがちょっと浮いていた。
「名前、教えてもらっていい?俺は浅川賢吾」
「小田れいなだよ」