「橘さん、来てくれますか?」
昼休み。
あたしを呼ぶ声。
『……矢代、さん』
あたしが名前を呼ぶと、ニコッと彼女が笑う。
彼女は可愛いけど、あたしはその笑顔が嫌いだ。
計算しつくされた可愛さ。
紗恋ちゃんの方が可愛い。
矢代さんに呼ばれ、あまり使われることのない東階段につく。
「ていうかぁ、なんで戻っちゃったんですかー?瑛美、昨日の落ちぶれたって噂の橘さん。見たかったのに」
ニコニコと、彼女は話を続ける。
『ごめんね、期待はずれで』
「ホントですよぉ。瑛美、見たかったんですから」
『本題はそれ?』
「いえ、ただあゆくんの言葉を伝えたくて」
『亜優の言葉?』
「はい」
彼女の笑顔の、雰囲気が変わる。