腕に閉じ込めた温もりは。

自分の命をも左右する、大きなもの。


幾度も脳裏をよぎっては、必死に振り払っていた、由紀の、肌。

上がる息遣いは章介を、溺れさせる。




絶望感と。

倒錯した強い独占欲は、章介の全てを、痺れるほどに甘く支配した。


決して触れてはいけないのに、愛してしまった、ひと。





…ひどく痛いと聞きますが、耐えて頂けますか、と。

必死に声を押し殺し、自分にしがみついていた由紀が、小刻みに頷くのを待ってから。

では目を開けてください、と、そのまぶたに唇を、寄せた。




殺される訳にはいかない、と。

そう思った。