「由紀さん…」


申し訳、ありません。

私は、地位もない、甲斐性もないヤクザ者です。

お側に置いて頂けるだけで、構わないのです。


どうか。

どうか、私を遠ざけないでください。

…命を賭けて、お護り致しますから。





章介は、スーツのまま。
天井を見上げたまま、苦しげに。

見合い相手の、事細かなデータを、頭の中で反芻した。



決められた日取りは、もう近い。

その日、自分は由紀を美容院に連れて行って。


お綺麗です、と…。



それから、見合い会場の料亭に連れて行って。

隣室で、話の進むのを待つのだ。



それが終われば…。

良い人そうじゃありませんか、良かったですね、

………と。