彼女は…。
見合いをしたら。

…受けてしまうだろうか。

結婚、してしまうだろうか。



そもそも、断れるような相手では、ない。

絶大な権力を持つ、笠島龍司の薦めた話だ。


由紀の父は、笠島龍司の弟で。

この組織では逆らえる者などいないけれど、唯一、頭の上がらないのが、彼。

断れるわけが、ない。
断るべきでは、ない。


ない、が…と、章介は天井を睨みつけた。



何か、決定的な欠点をでっち上げれば良かった…のか?

例えば、他に女性がいて、子供がいる……とか?



「……」


笠島龍司が、それを欠点と見做さないのは、わかりきったこと。

早くに所帯を構えた弟とは違い、なかなか身を固めようとしなかった彼には。

8歳になる息子が外にいる上に、いまだ数人の愛人を持っているのだから。