いつから彼女に、並々ならぬ愛を感じるようになったのか。

分を超えて、いつから触れたいと思っていたのか。


いつから欲しいと……

彼女の全てが欲しいと……思うようになったのか。




「“ご自由に”、ですか……」



章介は、ごく近所に借りたマンションの一室で。

スーツのまま、自分のベッドに仰向けに倒れ込んだ。



いつから彼女は。

自分を愛してくれるように、なった、のか。

しがない付き人でしかない、自分を。
単なる足であり、手であり、時計でしかない、自分を。




由紀を、彼女の家に届けて。

いつもなら、周りに解らないように愛らしく笑むのが常なのに。

目も合わせてくれなかった。



“ご自由に”とは、もしかしたら解雇を意味するのか、と。

急に胸が、切なく締め付けられた。