「……あ…ッ……ち…」

「え…やだ佑二さん火傷しましたか!?」


そろそろ煮上がる頃かと、閉めたフタを開けた。

一気に上がった、熱い蒸気に。




「冷やしてください!」


ほんの少し、小指のあたりを、撫でられた。

チリチリとした痛みは、軽い火傷。
大したことは、ない。


ない、のに。



「ああっ、赤くなってます!」


人の手を掴んで、いきなり水道水に突っ込んだ雅に、不覚にもなすがまま。




「……シャツ濡れたんだけど」

「あとで着替えて下さい」



さっきまでの、寝ぼけたような緩慢な動きとは裏腹、やけに威圧感を増した雅に、思わず黙り込んだ。



「氷……」


冷蔵庫開けますね、と断りを入れるやいなや、ためらいなく氷を掴んで。

そのまま佑二の手を、氷ごと包み込んだ。