「……起こせば良くね?」


「でも……」

寝てるかどうかも分からなかったし…。
勝手に開けるわけにも、と。


学校帰りなのか、ポニーテールに結い上げた髪を揺らして。

雅は、立ち上がろうとはしないまま、曖昧に笑む。




「…ああ、そう」


佑二は、貼りつきがちな前髪を掻き上げかけて、手を止めた。


…どうせまた、あからさまに顔を覗き込むに決まってる。

この娘の前で、余計な事をしたら面倒ばかり。



「………上がったら?」


一階は、兄貴の事務所。
二階は、住居。

いつからいたのか、靴も脱がないままの雅に、うんざりしたように、声をかけた。




「あ………いえ、大丈夫です」

「……ああ、そう」




めんどくさい。
心底めんどくさい。


起き抜けから、なんか嫌なもの見ちゃった気分。