次の金曜日の、夜。

約束をしたわけではないけれど、私は憑かれたように、ライブハウスに向かう。


今日も、彼は歌うはず。


私はウィルキンソンの辛いジンジャーエールを飲みながら、彼の歌を感じる。

ステージのそばで飛び跳ねるよりも、一番後ろのこのカウンターから観るのが、好き。


隣に座った、どこかの…
ん~……お兄さん、が。


先週、哲さんに持ち帰られたってほんと?と、神妙な顔で、訊いた。




「“哲さん”?」

…テツサン…言いにくいな。



「今歌った、赤い髪の」

「ああ、うん、送って貰ったよ」



何度かここで会う、この彼は。

何かを言いたげに、そうかぁ…、と半笑いで。

まあ…あんまりフラついてても…な、なんて。

なんだかよくわからない事を言って、離れていった。