「…ちょっと、待って」



ぎゅ、と腕を、掴まれた。

歩き出していた、お兄さんと私とは振り向いて。

同じようなタイミングで、固まった。




やだ、何?
なんで?

なんで、赤い髪のボーカリストが、私の腕を掴んでる?




「悪いけど…俺と約束あるから」

「…え、マジっすか」




蜜、と。




この人…私を、呼んだ?

一度も、喋ったこと無いのに。




「行こう」

「……ぅん…」



私は腕を引かれるままに。

赤い髪から視線を逸らしたまま、真っ直ぐな道を歩き出す。


掴まれた腕から緊張が、全身を強ばらせた。





やめて。
やめてね?

絶対、したがらないで?



お願い。
お願いだから。

私、あなたとは、知り合いたくない。