雅に、弟と会うと言っただろうか。
出がけに、誰と会うなどと、言った事があっただろうか?
気にしないかも知れない。
俺が誰と会おうと。
「…帰る」
「えぇ…じゃあ駅まで一緒に行く。途中でなんか買うし」
だけど、気にしていたら?
クリスマスイブだ。
女と会うとでも、思っていたら?
革張りの会計伝票を持って立ち上がった凱司の身長に、まわりの目がちらりと向いた。
「なら、早くしろ」
急に、心配になった。
また意地を張って、平気な振りをさせているのかも知れない。
傍に、行かなければ。
体温を感じるくらい、傍に。