白い硬い箱2つに、青い紙袋を2枚添えて運んできたウェイターの、無表情と柔らかい物腰が、鷹野を思い出させた。
あいつは、急いで帰宅するだろう。
クリスマスイブだ。
走って帰って来るけど、でも寝てて、と雅を腕に閉じ込めて、ずいぶん真剣に囁いていた。
「一個、兄貴のな」
「あ?…ああ」
こんなものでも、喜ぶだろうか。
他に何か、買ってやるべきだろうか。
今までの女には、欲しがるものをその場で買い与えた。
遠慮も何もなく、したたかにねだる女は嫌いじゃない。
だから、何も欲しがらない雅には、何をやったら喜ぶのか、解らなかった。