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にっ、と悪戯っぽく笑顔を浮かべる彼に、皿ごと押しやり、凱司は再びワインを注ぐ。



「兄貴さあ、好きな女とか、いたりする?」


寄せられた皿から、真っ先に香草にまぶされた白身魚を口に入れ、急にそんな事を聞く。



「なんだ克己、また惚れた女ができたのか」



彼の名は、笠島克己。

笠島凱司の、腹違いの、弟。




「そいつ、ヤろうとしたらさ、護身用だかなんだか知らないけどカッター出して来てさあ」



本家を継ぐはずであるこの弟は、有り余る金と悪どい権力を持つ、非常に無邪気で、惚れっぽいという、少々厄介な、男。


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