ドライヤーを取りに行っていたらしい哲が、鏡に映り込む。


「真也、近い」

「はぃはぃ」


ちろ、と睨んだ哲は。

こっちおいで、と私を立たせて。
掛けていたゴミ袋を外してくれた。

パタパタと服も、はたいてくれる。




「……どさくさに紛れて触るとか…相変わらずタチ悪いなお前」


触っ…!?

どう見たら…そんな風に見えるの!?



「…哲……この人おかしい」

「真ちゃんとお呼び」


「……この人おかしい!!!」

「真ちゃんと呼べ!!!」



命令口調で呼ばせる感じじゃないよ!!!

なにこの人!!
なにこの人!!



「……聞き流してやって」

「だって!」


「大丈夫。ほら、可愛くなってるから」

な?
なんて。

哲は、私を洗面台の鏡に向かせると、そうするのが当たり前みたいな、躊躇いのなさで。

私の髪に、ドライヤーをかけ始めた。