狭い、バスルーム。

ほんの2m四方くらいの空間の真ん中に、私。

すぐ後ろにギタリスト。

更に後ろのドアに、哲が見える。


鏡に映った私は、セミロングの髪を両手で大きく掬われて初めて、置かれている状況に、危機を感じた。



「ね…ねぇ…」

「ん~?」



なんか…やだ。

ねぇ、なんかやだよ。



「可愛くしてあげるから」


「………なんか…すごい怖い」

「今更抵抗したって無駄だョ」

助けなんか来ないよ?
大丈夫、優しくするから。



「……………」



な…ななななんかやだ!!
なんかやだ!!

なんかエロい事言われてる気がする!!!



「…真也…馬鹿みたいなことばっかり言ってんじゃねーよ」


哲の呆れた声は聞こえたけれども。

彼が私の髪を切る事に、なんら不安は持っていないようだった。