自分が体調を崩すなど有り得ない、と凱司は思う。

ましてや、雅に心配されるなんて。



部屋のすぐ外で、着信があったのか、雅の声が小さく聞こえる。

気付いているのかいないのか、鷹野と話すときの声は柔らかく、口調は甘い。


それが時に苛立たしいこともあるけれど。





『今日はあたし、凱司さんの部屋にずっといますから、鷹野さんは…お仕事終わったらで大丈夫です』




………………。

…可哀想に。


これで悪気がないどころか、“心配ないから慌てて帰宅しなくても大丈夫”という程度の意味なのだから。



押し込まれた、アザラシのぬいぐるみをそっとベッドの下に落として、凱司は。




帰りに煙草買ってこい
あれもこれも心配ない

そう、鷹野にメールをしてやろうと思いながら、寝返りを打った。



~終わり~